まず自分が幸せになることで、周りの人にも循環していく。フリーランスだから出会えた仕事の楽しさ、仲間とのつながり。|野尻 汐里

Kanonは「心地よい選択のできる世界をつくる」をミッションに、クリエイティブの制作を行うベンチャー企業です。

人生は常に選択の連続。1つの選択が明日の自分をつくり、時に運命さえも変えてしまう。その1つ1つの選択に納得感を持てる人が増えたら、そしてその選択が誰かの笑顔に繋がるとすれば、人々の幸福度はあがり、幸福の連鎖を生み続けられるのではないかと私たちは考えます。

今回は、フロントエンドエンジニア・野尻 汐里さんにインタビュー。Kanonの主軸事業であるKanonCreators(クリエイティブ制作事業)には第1期より加わっていただき、クライアントやユーザーに寄り添ったWebサイト制作でご活躍いただいています。

フリーランスになって変化があったという自身の性格や考え方、コーディングの魅力からユニークな営業方法まで…ハッピーオーラ全開で語ってくださった充実の内容をレポートします!※2024年3月取材

目次

デザイン専門学校卒業後、エンジニアの道へ

ーーはじめに、自己紹介からお願いします!

フリーランスのフロントエンドエンジニアとして活動している、野尻汐里です。現在27歳で、2020年に独立し、今年で5年目になります。

ーー「フロントエンドエンジニア」というお仕事は、聞き慣れない方も多いですよね。具体的にはどのようなお仕事なのでしょうか。

エンジニアには「プログラマー」「フロントエンド」「バックエンド」など色々な種類があるのですが、

フロントエンドエンジニアは、Webサイトなどの画面越しでユーザーの目に直接触れる“フロントエンド”の部分を設計・構築していきます。デザイナーさんがデザインしたものを、HTMLやCSS、Javascriptといった言語を駆使して、インターネット上で誰もが見られるかたちに作り上げていくお仕事です。

ーーフリーランスになるまでの簡単な経歴を教えてください。

もともとはデザイナー志望でした。地元・三重の高校を卒業し、名古屋のデザイン専門学校に進学しました。そこで講師の方に「プログラミングもできた方が将来の幅が広がるよ」と教えていただいて。商業高校出身でタイピングが好きだったこともあり、デザインとプログラミングの両方を学べる「Webデザインコース」を選びました。

卒業後、通信系の中小企業に新卒として入社しました。BtoBでネット回線等の提案と一緒にWebサイト制作も受注していて、その制作部のコーダーとして働いていました。

当時の仕事は、営業部が獲得してきた制作案件をライターが原稿に起こして、デザイナーがデザインしたものを私が構築する、という流れ。HTML/CSSをメインに3年弱ほど、コーディングの基礎をしっかりと学ばせていただきました。

コーディングを愛しています

会社員2年目で決断したフリーランスという選択肢

ーーその中でフリーランスへの転身を考えたきっかけは?

入社後1年ほど経ったころに気持ちの変化がありました。

専門学校時代の友人たちが、大型商業施設の広告を「これ、私が作ったんだ」と話していたり、制作会社に入社して夜遅くまで仕事で頑張っているのをSNSで見たりして…。

「自分は、本当にこのままで良いのかな?」って。周囲と自分の状況を比較して「もっと頑張らなきゃ!」と感じていたのだと思います。

それを、仲良くしていただいていた直属の上司に相談したところ、「もっと色んなことをやりたいなら、この会社を出るべきだよ」と言ってくださり、それで転職を決意しました。

ーーすごく素敵な上司ですね

そうなんです。また「転職先をなんとなく探すのではなく、何月何日には辞める、と期間を決めた方がいいよ」ともアドバイスしてくださって。その後すぐに部署のトップに「1年後に辞めます!」と宣言して、働きながら転職活動をはじめました。

ちょうどそのタイミングで、専門学校時代の恩師にお誘いいただき、ある集まりに参加しました。そこには自分の好きなことを仕事にしている10~20人ほどのフリーランスの方が参加されていたのですが、みなさんが本当に目をキラキラさせながら話していて。

フリーランスになるきっかけをくれた名古屋のファミリーたち

そこで自分の状況を話したところ、「独立しちゃえば良いじゃん!」とすごくラフに言ってもらって(笑)

「まだ22歳で若いんだから、フリーランスが向いていないと思ったら、また会社員に戻ればいいよ」といったアドバイスもいただきました。「なるほど、そんな選択肢もあるのかぁ」と、その時にはじめてフリーランスという選択肢を考え始めました。

ーー以前から思っていましたが、野尻さんって本当に“素直”ですよね。

そうですね、素直かも!(笑)上司に宣言していた退職日が数ヶ月後に迫っていたこともあり、「独立するぞ!」と、半分“勢い”で決めました。

有難いことに、退職するタイミングで会社から「一部、業務委託でやってくれない?」とお話をいただいて。毎月、固定で10〜15万ほどいただきながらの独立でした。

ーースタート時点から固定の案件があったのは、大きいですね。

はい、本当に。あとは、ペラペラの紙にとりあえず印刷しただけのような自作の名刺を持って、制作会社や交流会などに足を運びました。

当時キンコーズで急いで作ったペラペラの名刺。笑

当時、デザイナーやイラストレーターが在籍している制作会社は多かったのですが、サイト構築ができる人は少なかったみたいで。後日、配った名刺からご連絡をいただき、実際のお仕事につながりました。

ーーそういった営業先の情報はどのように収集していたのですか?

フリーランスの知り合いから「今日、飲み会やってるけど来る?」と誘われる機会があれば、とりあえず参加していました。

そうして人脈ができてSNSでつながると、その人経由で情報が回ってきたりだとか。あとは以前から、気になったクリエイターや制作会社のアカウントをフォローしていたこともあり、情報が自然と集まってきました。

辛かった独立1年目…泣きながら働いた経験も

ーーフリーランスとしての走り出しは順調でしたか?

基本、デザイナーさんを経由してのやり取りが多いのですが、ブランディング・デザイン力のあるデザイナーさんとのお仕事は学びが多い反面、細部までの“こだわり”もやはり強くて…。

それを実装しなければいけないのがとても大変でした。夜遅くに「明日の朝までにお願い」と言われても、やはり“下請け感”があって、何も言えず悔しかったです。

当時は自分の周りに同じような職種の人がいなかったのもあり、相談できる人もいなくてすごく孤独でした。

独立のタイミングで狭いアパートに引っ越したのもあって、一室にこもって仕事ばかりしているうちに閉所恐怖症にもなりかけて…。

仲の良い友人に「夜、寝るだけで良いから家に来て!!」と頼んで、寝ている友人の横で泣きながら仕事をすることもありました。笑

今思えば、本当に辛かった1年目ですが、辞めたいと思ったことは一度もなかったです。

定期的にアートに触れる

コーディング愛と“人のために”という想いが原動力に

ーー厳しい労働環境を経験しても「辞めたいと思ったことがない」のはなぜでしょうか?

根底には、やっぱりコーディングが好き、ということがありますね。タイピングしている時がとにかく楽しい!(笑)

本当に好きでやっているし、自分で選んだ道だし…他の事をしようって、思うことがなくて。

ーーまさに“コーディング愛”ですね!そんなコーディングの魅力とは?

夢中になれるところ、でしょうか。デザイナーさんからデザインカンプが上がってきたときに、「どう構築しよう?」ってワクワクするんですよね。

あとは、デザイナーさんがやりたいことを“私が実装させたい”って思うんです。構築したら、まずはじめにデザイナーさんに見せるのですが、そこで「おおー!」と喜んでもらいたい。

個人でディレクションからデザイン、構築までを担当する場合は、クライアントに「わぁ!こんな風にできるんだ!」と言ってもらえることを想像して、頑張れる。“誰かのためにやりたい”って思えるんです。

ーー“誰かのために”というお仕事は色々ありますが、その中で野尻さんが好きな「コーディング」と掛け合わさって成り立っているんですね。それって“幸せ”ですね!

そうなんです、めっちゃ幸せ…!(笑)だから本当に、人生に感謝です。

自分の人生に関わってくれる方々のおかげで自分が今、仕事を楽しいと思えています。やばい!泣けてきた…(涙)

現在の働き方、案件獲得のためのユニークな営業方法とは

ーー現在はどういったお仕事を中心にされていますか?

この半年間はある会社さんにフルコミットで所属していましたが、現在は再びフリーランスとしてさまざまな企業と業務委託契約を結んでのお仕事が基本です。

新たに自分で営業をかけたり、業務委託提携の求人に応募をしたりしています。

今日も、作業していたカフェで、帰り際に店員さんに名刺を渡してきました(笑)

ーーすごい!!それって、誰にでもできることではないと思うのですが、その行動力はどこから来ているのでしょうか?

私ももともとは「これを言ったら相手にどう思われるかな?」と、人目を気にしてしまうタイプでした。

それが変わったのは、やはり独立してからですかね。チャンスは自分から掴んでいかなければいけないし、待っているだけではダメだなと思って。

フリーランス仲間との出会いも大きかったですね。皆、他人の話も聞くけれど自分の話も積極的にするし、人間関係もさっぱりしているというか。

意見が違うことは悪いことじゃない。自分が知らない意見を知ることができるのって素敵なことじゃない?って。「自分の思うままに生きて良いんだ」と思えました。

気分転換を兼ねてカフェで作業することも多いです

KanonCreatorsやフリーランス仲間とのつながり

ーー野尻さんとの出会いは、Kanonを法人化する前からですね。気付けばKanonCreatorsのコミュマネのような役割も担っていただいていますが…(笑)Kanonに参加していて感じることはありますか。

“クリエイターファースト”だな、という印象が明確にあります。

一人ひとりのクリエイターに寄り添ってくださるのを感じます。「心地よい世界」というミッションを、代表の加奈さんをはじめ、皆さんが体現しているなぁって。

ーー嬉しいです。具体的にどのようなときに感じていただいていますか?

2つあるのですが…まずは、コミュニケーションの部分です。

日頃、Slackなどやり取りをさせていただいているコミュニケーションツール上での、皆さんの“言葉遣い”

Kanonで関わる皆さんは、業務的な連絡にも必ずと言ってよいほど、気遣いの言葉が添えられていて。ドライな関係になってしまいがちな文面でのやり取りにも、優しさや温かさが感じられます。

そういう言葉遣いって、あってもなくても仕事は進んでいくけど、あることによって気持ちよく働けるというか。「こうやって気遣ってくださるなら、こちらもそれ相応またはそれ以上で返していきたい」って思えるんですよね。

ーークリエイターの心の状態って、アウトプット(制作物)にもきっと表れるのではないかと思っていて、だからテキスト上でのコミュニケーションも初期から大事にしています。それがカルチャーとして浸透していることが嬉しいです。

2つ目は、クリエイターイベントや周年パーティーなどのオフ会を定期的に開いてくださるところです。

私自身、上京してもうすぐ2年になりますが、最初は同業の知り合いが全然いませんでした。

Kanonのオフ会を通して同職種・同年代の仲間、同じマインドを持った仲間ができました。そういう機会を与えてくださることにも感謝しています。

ーーやはり同業である横のつながり・仲間というのは、あって良かったと思いますか?

良かったです。実務的な面でいうと、わからないところを聞けたり、共有できたりするところがとても心強いです。

あとは…私が夜型ということもあるのですが(笑)遅い時間帯でも同じように頑張っている仲間がいること、でしょうか。「あの子も頑張っているんだ」と思えることで、1年目のような孤独感を感じることがなくなりました。

直接つながっていなくても、心でつながっているような感覚が、精神面での支えになっています。

先日の2周年パーティーの運営チーム集合写真

Kanonのミッション「心地よい選択のできる世界をつくる」について思うこと

ーー最後にKanonのミッションについてお聞かせください。今の野尻さんが考える「心地よい選択のできる世界」とは?

まずは、自分が幸せであること。
自分が生き生きと働く選択ができるのが「心地よい選択のできる世界」だと思います。

これは実体験ですが、SNSなどで今の考え方や働き方を発信していると、昔の友人から「私も挑戦してみようと思えるようになったよ」とメッセージをもらったり、直接相談してくれる子が増えたり…。

自分が心地よい選択をすることで周りの人にも循環していくのだなぁと感じました。

独立前にフリーランスの方々に出会って、自分が良い影響を受けたように、今後は私自身も、誰かが一歩を踏み出すきっかけになっていきたいです。

母校の名古屋デザイナー学院で在校生向けにお話しました(卒業生講演会)

ーーまず、自分が幸せであること、自分のご機嫌を自分で取ってあげることって大事ですよね。野尻さんは特にそれが上手だなと思っているのですが、コツを教えていただけますか?

何してるんだろう。空を見上げてる…かな?(笑)「PERFECT DAYS」という映画が好きなんです。

主人公が毎日、空を見上げるシーンがあるのですが、それに影響されて私も見上げるようになりました。「今日も空がきれいだな」とか「曇り空にも美しさがあるな」とか。「日常を大切にしよう」と思える作品なんです。「当たり前のような毎日も、特別なんだ」って、心にスッと入ってきて。

たとえばあの日、オフ会に参加したからこそ出会えた仲間がいる、とか…そういう1つ1つのことに感謝できるようになりましたね

感謝の気持ちは、言葉でも伝えていかなきゃと思っていて、仲の良い友人にも「本当に出会えて良かったよ」「いつもありがとう」って伝えています。言葉にすると伝わるし、相手もそう思ってくれたら私も嬉しいし…そういう気持ちを大切にしています。

聞き手:岩津加奈(XInstagram
文・編集:竹田美穂(Instagram
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WRITTEN BY

「心地よい選択のできる世界をつくる」をミッションに掲げるクリエィティブカンパニーです。

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