自分にしか出せない色で描く。心地よさから生まれるデザイン|クックドゥードゥードゥー おおはし えりな

Kanonは「心地よい選択のできる世界をつくる」をミッションに、クリエイティブの制作を行うベンチャー企業です。

人生は常に選択の連続。1つの選択が明日の自分をつくり、時に運命さえも変えてしまう。その1つ1つの選択に納得感を持てる人が増えたら、そしてその選択が誰かの笑顔に繋がるとすれば、人々の幸福度はあがり、幸福の連鎖を生み続けられるのではないかと私たちは考えます。

今回は、Kanonの主軸事業であるKanonCREATORS(クリエイティブ制作事業)としてご活躍いただいている、クックドゥードゥードゥーのおおはしえりなさん(以下:おおはしさん)へのインタビューを実施しました。 ※2024年10月取材

気鋭の新人デザイナーとして業界でも話題のおおはしさんが、制作において大切にしていること、おおはしさんらしいデザインを象徴する、大胆なグラフィックデザインについてお話を伺いました。

目次

自分の“好き”に導かれてデザイナーに

ーーまずは簡単な自己紹介からお願いいたします。

クックドゥードゥードゥーという屋号でデザイナーをしています、おおはしと申します。昨年2023年4月に独立し、現在2年目です。

ーーKanonからお声がけさせていただいたのは、おおはしさんがまだ独立して間もない20236月ごろでしたよね。当時はロゴ、バナー、紙媒体など幅広く制作されていた印象です。

はい。紙媒体もWeb媒体もひと通りは受注できるのですが、最近はほとんどWeb制作が中心です。個人事業主様から直接ご依頼をいただくこともあれば、Kanonのようなパートナー企業様からご発注いただくこともあります。

ーーWeb制作はクライアントのヒアリングから実装、公開まで業務が幅広くありますが、どのように受注されていますか?

案件によりますが、ヒアリングからワイヤーフレームの作成、デザイン、構築をして公開まで、すべて1人で行うこともあります。パートナー企業様からの案件では、デザインのみを担当することが多いですね。クライアントの要望に合わせて、という感じです。

ーー今や気鋭の新人として業界でも注目される存在で、この1年はお忙しかったことと思います。デザイナーというお仕事に就いたきっかけや経緯を教えてください。

小学生の頃から図工や美術が得意で、通知表もとても良かったんです。だから自然な流れで、その得意を生かせる仕事に就くのかな、と子どもながらに思っていました。

高校ではデッサンや立体作品などを学ぶ美術の専門コースに進み、大学も美術大学へ行きました。好きなことをずっと続けていたら、デザイナーという仕事に辿り着いたような感じです。

グラフィックデザインについては、IllustratorやPhotoshopの使い方を大学でほんの少し学んだ程度でした。

新卒で入った会社では、タオルやポーチなどのインテリア雑貨のデザインを担当していて、グラフィックデザインとはあまり接点がなかったのですが……いつしかWebデザインに興味を持つようになりました。

制作会社で働きながら、ふと思い立った “独立”

――その後、第二新卒でWeb制作会社に転職されたとのことですが、未経験転職で新しく学ぶことも多かったのではないでしょうか。

はい。Webを中心としたデザイン事務所だったのですが、未経験入社でもしっかりと研修を受けさせてもらえる環境だったので、課題制作やオンライン学習などを通してたくさん勉強しました。

――制作というと、やはり忙しい会社が多いと思いますが、当時はどのような働き方でしたか?

3年ほど勤めたのですが、最初の1年間は18時には退社できるような、余裕のある働き方でした。

その後、大きなクライアントさんから重めの案件を定期的にいただくようになり、残りの2年はずっと忙しかったですね。朝9時過ぎから働いて24時頃まで働く日が何日か続く……といったような(笑)

――そうして働く中で、どのように独立に至ったのでしょうか?

もともと考えていたわけではなく、独立する半年くらい前に突然、思い立ったような感じです。

小さな会社だったので、やはり何でも1人でやらなければいけない環境でした。ですがそのおかげで制作の一連の業務を学ぶことができ、色々なスキルが身に付きました。

「1人でも全然やっていけるかも」「やってみたい」と思ったのがきっかけだったと思います。

当時の社長も元々フリーランスで働いていた人だったので、「自分は○○○万円稼いだこともある」という話なども聞いていて、「私だったらどこまで頑張れるんだろう?」とも気になりました。

独立して間もない時期に手がけた「Studio Mora Mora」のWebサイト

葛藤の先に見えた自分らしいスタイル

ーーおおはしさんと言えば、他のデザイナーさんにはないユニークなデザインが特徴です。ご自身の“得意なデザイン”とは?

「グラフィックを用いた、ダイナミックなデザイン」と表現しています。グラフィックやイラストを使った動きのあるデザインで、“現実的”というよりも“やや空想的”なデザインと言えるかもしれません。

「東海汽船グループ10周年記念特設サイト」

ーークライアントがどういった理由でおおはしさんに依頼されたのか、聞いたことはありますか?

はい。結構、自分から聞いてしまうタイプですね(笑)

「デザインが面白いから」「大橋さんのデザインを体感してみたいと思ったから」といった理由でご依頼いただくことが多いです。

ーーなるほど。それは、おおはしさんが戦略的に“狙って”行なっているのか、おおはしさんが“好きで”作ったデザインが、偶発的に依頼主の目に留まっているのか、どちらでしょうか?

どちらもあると思いますが、偶発的なところが強いかもしれません。

自分の気持ちに素直に作ったものが、お客様の心にも響いているのではないかと思います。

独立した当初、自分の色を出して作っていくべきか、反対にどんなテイストでも作れるデザイナーになるべきか、悩んだ時期がありました。

あくまでも“商業デザイナー”なので、自分の色を前面に出しすぎてしまうと「それはデザイナーではない」と言う人もいますよね。

でも周りの何人かに相談をしたところ、「おおはしさんにしかできないデザインをやった方がいいよ」と回答してくれる方が多くて。

それで、自分の得意な方に振り切ってみたところ、幸い、それを「好き」「面白い」とご依頼くださる方がいてくださった、というかたちです。

ーーデザイナーやデザイナーを目指す人が誰しも一度はぶつかる問題かもしれませんね。「自分らしいデザイン」に迷う瞬間があるというか……。「自分の好きなデザインをしたい」という思いは、どのように芽生えたのでしょうか?

2023年に「小川ぶどう園」様のデザイン制作をさせていただいた際に、そのスタイルが確立したように思います。

「自分の作りたいもの」と「クライアントの求めるもの」を上手く織り交ぜて制作できた実感がありました。

ーー「小川ぶどう園」さんは、おおはしさんの代表作とも言えるWebサイトですね!私も拝見して「こんな表現ができるデザイナーさんがいるんだ」と衝撃を受けたのを覚えています。どのような経緯でそのスタイルが出来上がったのでしょうか。

実は、ある大きな“プレッシャー”があったんです。

ご依頼を受けた当時、私がSNSを一方的にフォローして、尊敬していたデザイナーさんから、ある日突然フォローバックがあったんです。「作られているもの、すごく良いですね」とコメントもくださって。さらには私のアカウントをシェアしてくださったので、その人を通じて他の有名なデザイナーさんもフォローしてくださって……。

だから「この人の顔を潰せない」「下手なものは出せない」というプレッシャーがあって、「次に出す制作物はめちゃくちゃ頑張ろう!」と思いました。

そこで、自分の得意な方に振ることで、良いものが作りやすくなるのではと思い、振り切った提案をしてみました。

この時に、“自分らしいテイスト”みたいなものが生まれたような気がしています。

それまでは自分の色をそこまで強く出したことはなかったのですが、「このテイストなら自分自身も作っていて楽しいし、周りの反応も良いな」と感じました。

「小川ぶどう園」Webサイト

「これしかない」という作品をつくる

ーーデザイナーとしてのキャリアは5〜6年とのことですが、制作において大事にしていることやこだわっていることは何かありますか。

「絶対にこれしかない」というデザインを出すこと、でしょうか。

だから「2案出してください」と言われる時は、正直、苦しいですね……

「絶対にこれが良い」というA案と、そうではないB案を考え出さなければいけないし、「B案が選ばれるリスクがある」と思うと心臓が痛くなるというか……(笑)

ーー自分がベストを尽くしたA案が選ばれずに、クライアントの好みやその他の色々な要因から最終的にB案に決まってしまう……というケースは、この仕事をしている以上、よくあることですよね。

そうですね。できるだけA案が選ばれるよう工夫して提案することはありますが、B案が選ばれた場合でも、そのプロジェクトが最良のかたちで進むよう、決まった案に全力で取り組んでいます。

自分も相手も心地よいコミニュケーションを

ーーKanonでご一緒させていただくようになってから1年半ほどですが、Kanonという会社にどのような印象を持っていただいていますか?

いくつかパートナー企業様とお仕事をさせていただいていますが、Kanonは「あったかい」「やさしい」印象ですね。

コミュニケーションを取る際、“ビジネス感”はある意味少なくて、チャットツール上でも絵文字やスタンプをよく使うので、お互いの感情が読み取りやすく、コミュニケーションが“柔らかい”なと感じます。

ミスが発生した際にも、ミスした人に対して「こちらこそ、きちんと伝えられていなくてすみません」と謝ったり……

(代表の)加奈さんの柔らかい、やさしい雰囲気がKanonにいる皆さんに受け継がれているような印象があります。

ーーありがとうございます。たしかに、誰かがミスをした時には、みんなが一旦、自分にも非を探すところがありますね(笑)「もっとこういう伝え方ができたな」とか……相手へのやさしさであり、自分自身に対してストイックでもあり……それがKanonのカルチャーであると言えるかもしれません。

はい、そういったところから学べることが多くあります。Kanonのようなコミュニケーションを取ると、自分も気持ちが良いし、「こういう伝え方だと相手も嬉しいだろうな」という気付きに繋がっています。

自分も相手も気持ちの良いコミュニケーションを

Kanonのミッションと、お仕事との心地よい向き合い方について

ーー 最後に、Kanonのミッション「心地よい選択のできる世界をつくる」についてお尋ねします。「心地よい選択のできる世界」という定義は、人によって違って良いものだと思っているのですが、おおはしさんが考える定義について教えてください。

みんながお互いに“配慮”や“気遣い”をしている世界が心地よいな、と思います。

以前、自分が作ったデザインを外部のエンジニアの方にお渡しするタイミングがありました。

私は「もっと動かしたい」「もっとこうしたい」と思うことは色々ありながらも「実装が大変だろうから……」と、お願いすることへの申し訳なさや遠慮があって……

「なるべくシンプルにしよう」とか「わがままは言わないようにしよう」という葛藤があったように思います。

それを口には出していなかったのですが、そのエンジニアの方が「我慢しないで、わがままを言ってもらって全然良いですよ」と言ってくださったんです。私の抱えていたモヤモヤに対して、気付いて配慮をしてくださったのだと思うのですが、その時にすごく“心地よいな”と感じましたね。

ーーおおはしさんの場合、自分の直接のクライアントやパートナー企業を通じてのプロジェクト案件など、コミュニケーションを取らなければいけない相手が多いのではないかと思います。そういう案件が立て込んで来ると、自分に余裕がなくなって、配慮や気遣いが難しくなることはありませんか。

わかります。でも……なるべく気にするようにはしていますね。

ーーおおはしさんは、お仕事の選定を丁寧に、思慮深くされている印象があります。フリーランスだと「受けない」という選択肢もありますし、今の状況から逆算して「今は受注できない」という判断もできますよね。

そう言われてみると……たしかに、お仕事をお受けする際は、相性や環境なども大切にしていますね。

特に長期的な案件などでは、お互いが心地よく進められることが大切だと思っているので、その点で不安を感じる場合は、お断りすることもあります。

心地よい環境でこそ良いクリエイティブが生まれると信じていますので、その点を意識しながらお仕事をお受けしています。

ーーなるほど…だからこそ良い作品が生まれるのですね。現役デザイナーやこれからデザイナーを目指したいという方にとって、とても良いお話が聞けて嬉しかったです!本日はありがとうございました。

聞き手:岩津加奈(XInstagram
文・編集・サムネイルデザイン:竹田美穂(Instagram

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