自分にも周りにも、素直であり続ける。12年間変わらないデザイナーとしてのスタイル|chabun

デザイナー兼ディレクター chabun

Kanonは「心地よい選択のできる世界をつくる」をミッションに、クリエイティブの制作を行うベンチャー企業です。人生は常に選択の連続。1つの選択が明日の自分をつくり、時に運命さえも変えてしまう。その1つ1つの選択に納得感を持てる人が増えたら、そしてその選択が誰かの笑顔に繋がるとすれば、人々の幸福度はあがり、幸福の連鎖を生み続けられるのではないかと私たちは考えます。

今回は、ディレクター兼デザイナーの石黒文菜さん(以下:chabunさん)にインタビュー。Kanonの主軸事業であるKanonCreators(クリエイティブ制作事業)でもご活躍いただいています。

未経験からグラフィックデザイナーになったきっかけや、デザイナーとして働くうえでの大切なこだわりなど、長く“クリエイティブ”に関わる人生を歩んできたchabunさんならではのお話をお伺いしました。

※2024年8月取材

目次

業界を変えてデザイナーへ再チャレンジ

――まず簡単に自己紹介をお願いします。

はい、chabunこと石黒文菜です。グラフィックデザイナーとしてWebとDTPの両方をやっていて、案件によってはディレクターを担当することもあります。お仕事の割合としてはデザイン7、ディレクション3という感じですね。

――幅広いですね!デザイナーとしてキャリアをスタートされたとのことですが、デザイナーになろうと思ったきっかけを教えてください。

元々はファッションデザイナーを目指していたので、服飾の専門学校に通い、アパレル業界へ就職しました。まずは販売員からのスタートでしたが、努力次第ではデザイナーにも挑戦できるということで頑張っていたんです。…でも最初からとばしすぎて、身体を壊してしまって。

そこでお仕事を辞めることになり、夢も何もかもなくなってしまいました。家から出られなくなるくらいに絶望していましたね。

そんな時に母から、「デザインは服だけじゃないし、広告代理店とかももしかしたら向いているかも」と言われて。

――広告代理店ですか?

はい。昔から友達の誕生日にアルバムを作って渡したりすることが好きで、そういう姿を見ていてくれたようなんです。それで、広告とかはどう?と。

そう言ってくれた次の日にハローワークに行ったところ、たまたま未経験のデザイナー募集を見つけました。

“3ヶ月間はトライアル雇用として国が給料を払うので、未経験を採用しましょう”という流れがあったので、未経験で雇ってもらうことができ、そこからグラフィックデザイナーになりました。

――「広告代理店とかも向いているかも」と声をかけてもらったときは、自分の中でピンときたのでしょうか?

そうですね!“デザイン”はやっぱり好きなことだったので、それに関わるお仕事なら良さそうだなと思いました。

あとは専門学校時代に、授業でIllustratorにふれる機会があったのですが、そのときに自分の中で“楽しい”とか“面白い”といった感覚があって。授業以外の時間でも先生に質問したり、自分でIllustratorをさわってみたりしていたくらいです。

その経験が大きかったこともあり、未経験OKでIllustratorが使えるお仕事、ということで応募しました。

“デザイン”や“ものづくり”が好きだった

頑張る原動力は「人との出会い」

――デザイナーになられて何年になるのでしょうか?

未経験で入社した会社に7年勤め、そこから独立して4年フリーランス、今の会社で1年半勤めているので…デザイナー歴としては12年くらいです。

――…長いですね!それこそ学生時代からクリエイティブに携わってこられたと思うのですが、デザイナーやクリエイティブ業界をやめようと思ったことはありますか?

今までにもありましたし、未だにあります(笑)。

――でもきっと、そこからまた頑張ることができるからこそ今があると思うのですが、chabunさんの頑張る原動力って何なのでしょう。

やっぱり人との出会いですかね。常に「もう無理!」となったタイミングで、周りから良い言葉をかけてもらったり、お誘いをもらったりしていて。

そういういろんな人との出会いで、「じゃあもうちょっとやってみようかな」と、頑張れているんだと思います。本当にいつも周りに恵まれているなと感じます。

――人との出会いが今のchabunさんを支えているんですね。その出会いというのは、偶発的なものなのでしょうか?

ありがたいことに、紹介で繋いでいただくことが多いです。

私は基本“フッ軽、断らない”みたいなスタンスでやっているので、そうですね…人との出会いに対してアクティブに動くというのは意識的に行なっていますが、良い人ばっかりに出会えているのは偶然かもしれません。

――運ですね!

はい、運です(笑)。人に出会う運は持っていると思います!

“出会い”にはアクティブに!

納得いくものを作るための大切なこだわり

――デザインやディレクションなど、お仕事をするうえでのこだわりを教えていただけますか。

これはデザイナーになってからずっと変わらないスタイルなのですが、「自分に嘘をつかない」ということにこだわりを持っています。

――仕事において自分の意見を主張する、というようなイメージでしょうか?

そうですね!ただ、私はアーティストではなく、あくまでも商業デザイナーであるということは心に留めていて、提案する際は必ず、“お客様の指示通りもの”と、“指示通りに作りましたけどもっとこんな感じが良いと思います!”という2パターンの案を出すようにしています。

お客様だけではなく、間にディレクターさんがいる場合も同じですね。

コストはかかるかもしれませんが、誰に対しても「自分としてはこう思います」という意見は素直にお伝えすることを心がけています。

――指示通りに仕事をすること、意見を主張することのバランスってすごく難しいなと思うんです。chabunさんはどの程度「違うな」と思ったら相手に伝えますか?

先ほど「自分に嘘をつかない」と、かっこいいことを言ってしまったのですが…まずは指示通りに作るんです。作っている途中で違和感に気付いたときは、その違和感がどの程度であったとしても必ず相手に伝えるようにしています。

そのうえで50%くらい自分の中で引っかかったら、別案を作って提案。それが2、30%であれば、別案ではなく「色を変えてみたらどうですか?」くらいの提案をすると思います。

何%であっても気になることがあればはっきりお伝えしますが、程度によって自分の意見の出し方が変わる、といった感じでしょうか。

――chabunさんの「自分に嘘をつかない」は、「デザイナーとして自分が納得のいくものをお客様にも提案したい」みたいなことと近いですよね。

まさにそれです!お客様も自分も納得のいくものを出したいんです!

――納期もありますし、ディレクターが間に入ることでクライアントが直接見えなかったりすると、何となくで進めてしまうこともあるのかなと思うんです。でも違和感はちゃんと相手に伝え、ちゃんと納得いくもの作る、というところにこだわりをお持ちなんですね。

まさにその通りです。綺麗にまとめてくださった(笑)。

“自分に嘘をつかない”がデザイナーとしてのスタイル

記憶に残る、デザイナーとしてのお仕事

――これまで作ってきた制作物で印象的だったものはありますか?

いろいろあって迷うのですが…。

1つは、行きつけだった服屋さんからロゴ制作の依頼をいただいたことですかね。フリーランスのときだったのですが、まさか自分の好きなお店からお仕事をいただけるなんて思っていなかったので、すごく嬉しくて。

依頼を受けた当時はロゴ制作があんまり得意ではなく、もう手探り状態だったのですが…提案したものに修正がほとんどなく、しかも今でもそのロゴを使ってくださっているんです。

初めてロゴ制作を任せてもらえたお仕事として印象に残っていますね。

――私も提案資料を拝見しましたが、初めて作ったとは思わない完成度でした…!

ありがとうございます。それまでも経験したことはあったのですが、直で自分の案件として、さらに近しい方からの依頼というのは初めてだったので、特に記憶に残っています。

――他にはありますか?

もう1つは、ブランディングのお仕事です。フリーランスのときに出向していた会社で「社内のブランディングがやりたい」という話があがり、社内資料のデザインなどを行なっていた出向デザイナーの私に声をかけてくださったんです。

…でも初めは断ったんですよ。ブランディングなんてやったことないですし、簡単に手を出してはいけないお仕事だと周りからも聞いてたので。それでも「わからないなりに手探りでもいいから!」とお願いされ、受けることになりました。

正直な話、全然うまくはできなかったと思うんですよ。ちゃんとした形にできなかったですし、途中で抜けることになってしまったので、やりきれていないんです。

でもこのお仕事を通して、ミッション・ビジョン・バリューとはどういうものか、自社フォントを作るといくらかかるのかなど、そういう今までに経験したことないことをたくさん経験させてもらい、ありがたくも面白いお仕事だったなと思っています。

そのおかげで実は今、ブランディングのお仕事が多くなっていますね。

――ブランディングの経験を積まれた現在のchabunさんから、当時お仕事を受けるかどうか悩んでいたご自身へ向けて、何か声をかけるとしたら何とかけますか?

うーん…今でもブランディングのこと全然わかってないよって言いたいですね(笑)。やらずに後悔するよりもやって後悔みたいな言葉があるじゃないですか。本当にその通りで、「どうせわかんないから、そのままやってもいいよ」と声をかけたいです。

経験を重ねても、「私1人でブランディングできます!」とは言えないんですよね。チームとして、他の人のデザイン力や提案力があるからこそできるものだと今は思っています。

仕事を終えて、大好きなビールで乾杯!

Kanonのミッション「心地よい選択のできる世界を作る」について思うこと

――Kanonとの出会いや第一印象について教えていただけますか?

はい。Kanonさん…というか加奈ちゃんとの出会いなのですが、知人からの紹介で1回お茶したんですよね。話が盛り上がって、お仕事よりもほとんど恋愛の話をしていました(笑)。

加奈ちゃん、とにかくガッツがあるというか…私よく周りから「ガッツあるね」と言われることが多いんですけど、加奈ちゃんを見ていると全然だなと思うくらいです。難しいことも最初から諦めず、どうやったらできるかを考えるスタイルがすごく印象的でしたね。

――他のメンバーからは「温かい」というような声がよくあがるのですが、「ガッツ」は初めてでした(笑)。最後に、Kanonのミッションである「心地よい選択のできる世界を作る」について聞かせてください。chabunさんが思う心地よい選択のできる世界とは?

できないこともできます!と受けて、その後に方法を考えるというKanonの姿勢って、相手を思いやっているからこそだなと思うんです。

「できません。うちでは無理です」と断ることもできる。でも、「自分は今こんな状態だから、こうにはできないかもしれないけど、ここまでだったらできますよ。」みたいに情報を開示することで、相手が選べる選択肢が増えますよね。

簡単に言うと、服屋さんの店頭でかわいいなと思う服があるんですけど、腕を出すことに抵抗があって買おうか迷っている。そのことを店員さんに相談したら、「在庫に袖があるシルエットがありますよ」と裏から違う服を出してきてくれる。そうすると「こんな選択肢もあったんだ」と選べる幅が広がりますよね。

見えている部分だけではない、相手を思いやった提案ができると、結果それが心地良い選択に繋がるんじゃないかなと思っています。

Kanonで出会った仲間たち

聞き手:岩津加奈(XInstagram
文・編集・サムネイルデザイン:田村佳苗(Instagram

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