「旅×デザイン」を表現しながら生きていく。 多様な価値観に出会うことが自分の“好き”に気づくヒントに。|小井詰 さちよ

デザイナー小井詰さちよ

Kanonは「心地よい選択のできる世界をつくる」をミッションに、クリエイティブの制作を行うベンチャー企業です。

人生は常に選択の連続。1つの選択が明日の自分をつくり、時に運命さえも変えてしまう。その1つ1つの選択に納得感を持てる人が増えたら、そしてその選択が誰かの笑顔に繋がるとすれば、人々の幸福度はあがり、幸福の連鎖を生み続けられるのではないかと私たちは考えます。

今回は、事業会社でインハウスデザイナーとして週4日勤務しながら、フリーランスデザイナーとしてKanonCreators(クリエイティブ制作事業)でもご活躍いただいている、小井詰さちよさん(以下:さちよさん)にインタビュー。 ※2024年5月取材

好きなもの、心地よいと感じるものに素直に生きることでたどり着いた「旅×デザイン」のある働き方、ライフスタイルについてお話を伺いました。

目次

週4会社員×フリーランスデザイナー

ーーまずは簡単な自己紹介からお願いいたします。

デザイナーの小井詰さちよです。株式会社TABIPPOという、若者に旅を広める会社でデザイナーとして週4日勤務しながら、副業でフリーデザイナーとしても活動しています。

ーーKanonではデザイン業務のほか、ロゴ制作のディレクション業務なども依頼させていただいています。主軸にされている、TABIPPOさんでのお仕事についても教えてください。

TABIPPOは10名ほどの小さな会社です。入社した当初は、社内のデザイナーは私1人だったので担当領域が広く、色々なことを経験させてもらいました。

Webデザインもやれば印刷物、ロゴ制作もやるし、デザインではありませんが旅の書籍や雑誌の企画制作など……。最近ではデザイン面のチェックを含めたディレクションも行っています。

制作した書籍や雑貨
これまでに制作した書籍や雑貨

アートと旅が好き — 美大へ進学、デザイナーの道へ

ーーデザイナーを志すきっかけは何だったのでしょうか。

子どもの頃からアート、“表現すること”に興味がありました。幼少期は「ちゃお」や「りぼん」といった少女漫画誌のイラストを模写したり、高校時代には一眼レフを買ってもらって写真を撮ったり。

また、父親の仕事の関係で高校卒業までの18年間、南米のチリに住んでいたこともあって、“旅”も好きでした。

高校卒業とともに日本に帰国し、美術大学へ進学しました。映像作品や立体作品を制作しながらデザインと旅に関わる何かがしたいという想いがあって、デザイナーを目指すようになりました。

ーー大学卒業後のキャリアについて教えてください。

1社目は、美大時代にインターンシップに参加させていただいたプロジェクションマッピングなどを扱う制作会社です。卒業後にそのまま就職し、1年弱ほど働きました。

その後、TABIPPOの代表から声をかけていただき、現在に至ります。

TABIPPOは設立当初、イベント運営などを行う学生団体であったのですが、実は私も、美大在学中にスタッフとして携わっていました。

TABIPPOが会社となって1年ほど経ったタイミングで合流し、現在、入社9年目です。

ーーTABIPPOさんから声をかけてもらったときは、「旅×デザイン」がようやくできる!という感覚でしたか?

旅にまつわるクリエイティブなことがしたい、と思っていたので嬉しかったですね。

実は、当時のTABIPPOにはデザイナーのポジションがありませんでした。代表からは「出版社と一緒に旅の本を出すから、旅もデザインもできる人を探している」とご相談いただいたんです。その書籍の企画・制作と並行しながら、社内のデザインのお仕事も担当させてもらうようになりました。

自分の好きなものがはっきりしていたからか、良い流れに乗って、自分のやりたい方向にたどり着けたのだと思っています。

ーー自分の好きなもの、やりたいことにすごく忠実に生きていらっしゃるのだなという印象を受けます。選択をするときに、迷いや不安はなかったですか?たとえばTABIPPOさんのように、社内にデザイナーが1人だけという環境であった場合、「制作したものに対してフィードバックをくれる先輩がいない」とか……。

うーん……今振り返ってみると、当時はそういう不安は感じていなかったですね(笑)

幸い、TABIPPOの代表がデザインに関心のある方だったので、何度も作りながら壁打ちをしていきました。その“楽しさ”が“不安”を上回っていたのだと思います。

ーーやりたいことがあっても“不安”が勝ってしまう人も多くいますが……さちよさんの場合は「旅×デザイン」という好きなものが掛け合わさっていたからこそ、「楽しそう」とか「やりたい」というポジティブな気持ちが、ネガティブな気持ちを上回ったのかもしれないですね。

デザイナーとして中堅ほどのキャリアに差しかかる時期に「自分のレベルを上げるために、社外に出てみるのも良いのではないか」と悩んだことはありましたね。

でもちょうどその時期に、フリーデザイナーとして外部の人とお仕事をするようになって、社内ではできなかった新たなデザインに挑戦することができ、スキルアップに繋がりました

「Webデザインに特化しています」とは言えないけど、「紙媒体もできるし、イラストも描けます」とは言えます。一本でやっている人には敵わなくても、複合すると「自分にもできているかな」という自信に繋がっています。

学生時代
カメラを持って出かけていた学生時代

複業で見えてきた、自分に合った働き方

ーー会社員としてデザイナー職に就く場合、働き方は大きく分けて2種類ありますよね。1つは、事業会社で自社のデザインを内部のポジションで進めていくパターン。それに対し、制作会社でクライアントの求めるものを、外部のポジションから作っていくパターンもあります。

さちよさんは事業会社で働いていて、良かったなと思う点はありますか?

事業会社の場合は、“積み立て”しながらデザインできるという点でしょうか。“TABIPPOらしさ”を表現するアウトプットやデザインを、長期にわたって常に考えて作っていけるところがすごく楽しいです。

ちょうど2020年に、TABIPPOのコンセプトやロゴデザインなどを刷新するタイミングがありました。デザインにとどまらず、自社のブランディングという観点から考えられるところが面白く、やりがいに感じています。

さちよさんが執筆した note 記事「TABIPPOの新しいロゴとデザイン / リブランディングの裏側も公開」はこちら

ーーなるほど。ブランディングからクリエイティブに落とし込むところまで、一気通貫で携われるところは面白そうですね。対して、フリーデザイナーとしては制作会社寄りの「相手が欲しいものを作っていく」という請負でのお仕事ですよね。両方を経験してみて、いかがですか?

制作会社で働く場合は、クライアントに合わせて毎回、新しいデザインを“ゼロイチ”で作っていくことが多いですよね。フリー業ではその楽しさがありますし、自分のデザインの幅を広げる経験に繋がっていると感じます。

ただ、常に新しいものを作り続けることは、私の性格では疲れてしまうので、副業として自分に余裕があるときに受注していて、本業とのほど良いバランスを保つようにしています。

ーー現在、Kanonからはクライアント案件でのデザイン業務などを依頼させていただいていますが、Kanonに対して感じている印象をお聞かせいただけますか。

クリエイターに寄り添ってくれる会社だなというイメージを持っています。

単純に「こういう案件をお願いしたいのですが、できますか?」と聞くのではなく、(代表の)加奈さんが「どんなお仕事が好きですか?今後、どういったお仕事をしていきたいですか?」と聞いてくださったのがとても印象に残っています。

クリエイターのやりたいことにマッチする案件を依頼したいと考えてくださるところが、素敵な会社だなと思いました。

制作したデザイン
さちよさんのデザイン制作実績

デザイナーという仕事の魅力と今後挑戦していきたいこと

ーーデザイナーとして間もなく10年ですが、現在、ご自身で感じている仕事の面白さを教えて下さい。

まず私自身が、表現やアウトプットをすることが好きなので、どうデザインしたら相手に伝わるのか、カッコよく見えるのか、といったコンセプト部分を考えて、思い描いたものを形にできるところが魅力だと感じています。

また、自分で作ったものが目に見える形として残るので、周りの人から「素敵だね」「良いデザインだね」といった感想をもらえる嬉しさもありますね。

ーー今後さらに伸ばしていきたいスキルや挑戦してみたいことはありますか。

少しずつですが、クリエイティブディレクションやブランディングのような“全体”を考えるポジションになっていきたいことが、まず1つ。

そしてもう1つは、デザイナーにとどまらず、クリエイターとしての活動もしてみたい、という想いもあります。

デザインは、事業会社であってもクライアントワークであっても、基本的には「問題解決をしていく」仕事ですが、

自分の中から出てきた表現を形として伝える、ということもやってみたいです。

ーークリエイティブな職種の方々は、“表現”ということへの興味関心がやはり強いように感じます。そこには「表現によって得られる喜び」みたいなものがあるのでしょうか。

そうですね、作っていく過程を楽しめている実感があります。

また、サービスやモノといった“商品”があって、それをより良く見せるビジュアルとして“デザイン”に起こすことで、商品の良さを人に伝えることができるところが魅力だと思っています。

旅好きな人たちと過ごすのが“心地よい”理由

ーーさちよさんの「旅好き」のルーツもお聞かせいただけますか。

チリに住んでいたので、日本には一時帰国で度々遊びに来ていて、南米やその他の国など、子どもの頃から旅をする機会は多かったですね。

あとは、中学・高校がインターナショナルスクールだったので色々な国の人が通っていて、多様な文化や考え方に触れることができました。そういった経験から、いろんな生き方や考え方があって良いし、正解はないと思っていて。

自分の知らない考え方、そもそも発想もできないようなことに出会うと「面白い」「やってみたい」と思うんですよね。

「自分には向いていないかも」と感じることももちろんあるのですが、それによって「自分が好きなものは何か」「自分がどうありたいか」を考えることが、自然とできていたのだと思います。

ーーなるほど!いろんな考え方を知っているからこそ、さちよさんは自分の好きなものがはっきりしているんですね。逆に私は、日本という環境でのみ育ってきたので、無くしたいけどなくしきれない「人と違うことへの不安」みたいなものが大人になった今でもあるように思います。さちよさんには、そういう感覚はないのでしょうか?

日本へ来て、多くの人にそういう感覚があるんだな、というのは感じましたね。主な情報源は、漫画やドラマ、ネットですけど(笑)

ただ、日本でも「旅好き」な人たちと一緒にいるのは心地よかったんですよね。

なぜそれが心地よいのかを考えたときに、海外へ行ったことがある人は「自分の考え方が必ずしも正しいわけじゃない」ということを知っているから、“受け入れる力”が強いのだと気付きました。

私のようなちょっと変わった経歴を持った人に対しても、旅好きな人は「面白いね」と受け入れてくれることが多くて。

ーー“受け入れる力”みたいなものを最短で養う方法って、多様な考え方を持っている人たちと過ごすとか、そういった環境に飛び込むことかもしれませんね。

そうですね。そういう方法の中で手っ取り早いのが、旅や留学なのかなと思います。

ーー海外、行きたくなりますね!私のような海外旅行初心者にもおすすめの旅先はありますか?食べることが好きな人向けの国で(笑)

やっぱり自分の興味関心に近い国が良いですよね。たとえば自然が好きならハワイもいいし、もう少し異国感や“旅っぽさ”を感じたいならタイもいいですね!食べ物も美味しいし、現地の人が日本人に比較的優しいので、行きやすいと思います。

チリのパルパライソ
チリ国内でも特に好きだという港町・パルパライソ

Kanonのミッション「心地よい選択のできる世界をつくる」について思うこと

ーー最後に、さちよさんの人生観から、Kanonのミッション「心地よい選択のできる世界をつくる」について聞かせてください。

「心地よい世界」は、自分の好きなものや自分がこうありたいと思う姿が、きちんと自分の生活の中に落とし込まれていることだと思います。

やりたくない仕事を生活のために嫌々やるという生き方は、私には合わないというか……。

やりたいことを仕事にして、プライベートでも好きなことをするのが、心地よいと思っています。

ーー自分の“好き”がわからない、という人や、最初は好きだと思って始めてみたけど、やっていく中で「何か違うな」と思い始める人もいると思います。さちよさんはそういった経験はありませんでしたか?

まずは、興味があったら一旦やってみるようにしています。その上で「合わないな」と思うこともありますが、とりあえずやってみて、違うと思えばやめてもいいですよね。

また、“100%好き”でなくても“一部分が好き”ということもあります。たとえばデザイナーも、デザインすること以外にも色々な仕事があるので、もしかしたら「自分はリサーチをするのが楽しい」と気付くかもしれません。そこからリサーチャーを目指すのもいいし……。

やっていく過程で徐々に探っていって、自分の“好き”や“心地よい”が見えてくることもありますよね。

ーーさちよさんには“旅”がありますよね。お子さんと一緒に旅されているのを見て「子どもがいても好きなことって続けられるんだな」と思いました。世間では「子どもが生まれたら好きなことはできなくなる」「自由なのは独身の間だけ」なんて言われますよね。

私も以前は「子どもができたら旅ができなくなる」のだと思っていたのですが……何だかんだ、年に1回は行けているかな。

「子どもがいたら全くできない」ということはなくて、今まで1ヵ月くらい自由に旅していたのが1週間くらいになるとか、海外に行っていたのが国内になるとか……“できること”の規模感は、大なり小なり変わるかもしれないけど、意外と続けられるんだなって思いましたね。

ーー素敵です。デザイナーとしても、1人の女性としてもママとしても、先を行くさちよさんにインタビューできてとても有意義な時間でした。ありがとうございました!

子どもがいても“好き”を諦めなくていい

聞き手:岩津加奈(XInstagram
文・編集:竹田美穂(Instagram
サムネイルデザイン:星野綾美(Instagram

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WRITTEN BY

「心地よい選択のできる世界をつくる」をミッションに掲げるクリエィティブカンパニーです。

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